音の名前(ドレミ)は覚えたけれど、楽譜になると分かりにくい・・・
よく知っているや聴いたことのある曲は弾けるけれど、耳から聴いたことがない曲は弾けない・・・
新しい曲を譜読みするのにとにかく時間がかかる・・・
ピアノのレッスンで楽譜の読み方を習ったばかりの方から、音楽を専門に学んでいる方まで、どんなレベルにおいても、譜読みや初見試奏 (初めて見た楽譜を弾いたり歌ったりすること) に苦手意識を持つ方は少なくありません。
念の為先に触れておきますが、譜読みの段階でまだ音源を聴くな、と言いたいわけではありませんし (良い演奏はどんどん聴きましょう)、楽譜が読めないと何も弾けない、というわけでもありません。
ただ、楽譜をすらすら読めるようになると、一曲を完成させるだけにとどまることなく、色々な曲を楽譜を見て演奏することが出来るようになります。
いくつもの弾いてみたかった曲をなんとなく弾けるようになったり、突然伴奏を頼まれてもさらっと弾けるようになったら・・・と想像するとわくわくしますよね。
今回は、ピアノの譜読みが早くできるようになるとっておきのキーワードをひとつご紹介します。
音の名前と順番(ド→レ→ミ→etc) を知っていれば、譜読みや初見試奏に苦手意識を持っている幅広いレベルの方に応用できるポイントなので、ぜひご一読ください。
目次
キーワードは「パターン」
早速答えが出ました。譜読みと初見試奏が早くできるようになるためのキーワードは【パターン】です。
ほとんど全ての音楽は、リズム・メロディー・ハーモニーなど音楽の構成要素の繰り返しによって成り立っています。
何がどこで繰り返されているのかというパターンを見つけて把握できるようになると、いちいち全ての音を一つずつ読む必要がなくなるので、読譜力が飛躍的に向上します。
また、このパターンを把握しておくことで、いつも曲の最初から通して弾くのではなく、狙った部分を練習するための部分練習を行いやすくなります。
部分練習は、集中力が限られている小さなお子さんだけでなく、時間をなるべく効率的に使いたい大人の方にもとても良い練習方法です。
さらに、発表会など人前で演奏するときに緊張して「あれ、この続きは何だったっけ?」と記憶が飛びそうになった時の対処法としてもとても有効です。
「きらきら星」
ここで「きらきら星」を例に挙げながら、具体的にパターンについて説明します。
「きらきらひかるー」や「Twinkle Twinkle Little Star」また「ABCDEFG…」など、世界中で歌われている曲ですね。
改めて楽譜を見ると、12小節のメロディーの中で繰り返されているフレーズを発見できます。
全く同じフレーズが繰り返されている場所に、1.黄色い四角 と 2. 青い丸 で印をつけました。
このようなパターンに注目すると、この歌は2パターンの繰り返しで出来ていることがわかります。
「ぶんぶんぶん」
もう一つ、「ぶんぶんぶん」を例に挙げます。この曲も同じように印をつけてみましょう。
日本では「ぶんぶんぶん はちがとぶ」という歌詞で有名なこの曲は、元々はドイツ語で「Summ Summ Summ, Bienchen summ herum」という歌詞です。ドイツ語圏の子供達もみんな知っています。
これも、先ほどの「きらきら星」と同じで、2パターンの繰り返しで出来ていることがわかります。
しかも、黄色い四角→青い丸が2つ→黄色い四角 という並び順も同じですね。
特に音楽専門の方は、三部形式という名前を聞いたことがあると思います。
この「きらきら星」も「ぶんぶんぶん」もまさにこれです。黄色→青→黄色の「三つの部分」から成り立っているから「三部」形式。
至ってシンプルな名前ですが、ハイドン、モーツァルトやベートーベンなどのウィーン古典派で有名なソナタ形式もまさにこの三部形式の一つです。三部分ではなくもっと増えたら「ロンド形式」、逆に二部分しか無ければ「二部形式」と呼ばれます。
曲が長く、また複雑になるほど、このざっくりとした曲の形式が頭に入っているか否かで楽曲を把握するスピードや弾けるようになるスピードが大きく変わります。
実は「パターン」同士も似ている
2つのパターンが繰り返されて1つの曲が出来ている、とご紹介しましたが、実はこのパターン同士も結構共通点があることが多いです。
曲のレベル別に例を挙げて見てみましょう。
初心者レベル: 「きらきら星」と「ぶんぶんぶん」
先ほどの「きらきら星」と「ぶんぶんぶん」に出てきた2パターンをさらに細かく見てみます。
まず「きらきら星」の黄色い四角の後半部分と青色の丸い部分を比べます。
お気づきでしょうか。
黄色のパターンを全部1音高くすると青色のパターンになります。
そう考えると、この2パターンはお互いに非常に似ていますね。
「ぶんぶんぶん」はどうでしょうか。
それぞれのパターンの一部が同じです。さらに言えば、青色パターンの前半部分は、同色パターンの後半部分=黄色パターンの一部を全部1音高くしたものですね。
上級者レベル: ラフマニノフ/コレルリの主題による変奏曲 Op.42より 第10変奏
曲が複雑になっても、パターンを把握できると理解しやすくなる例を挙げます。
ピアノのリサイタル等で人気のレパートリー、ラフマニノフ作曲「コレルリの主題による変奏曲」を見てみましょう。
楽譜はIMSLPで見つけました。
まずは1ページ目を見てください。
パッと見た時に、まず四角く囲われて色がついているところが目につくでしょうか。
色は違いますが、四角く囲んであるところは全て同じパターンです。
リズムやメロディーが同じパターンのところを全て太線で四角く囲いました。リズムやメロディーは同じですが、和音/和声が違うので、和声ごとにピンク・青・黄色・緑の4色に分けています。
ところで、色がついていない「アウフタクト(半音階)」と書いてある箇所を見つけてください。
4色で四角く囲ってある箇所の間に挟まれています。見つけられましたか?
「アウフタクト(半音階)」を見つけられたら、2ページ目に進みます。
これが2ページ目です。
1ページ目と比べて、2ページ目はほとんど赤 (新しい色) ですね。1ページ目にたくさん出てきた青色が、この2ページ目の最後にちょっとだけ出てきます。
2ページ目のこの赤色の箇所は全て半音階です。つまり、先ほど1ページ目で確認した、色がついていなかった箇所=「アウフタクト(半音階)」と同じです。2ページ目のメインになるこのパターンが1ページ目で既にちょっとほのめかされていたわけです。物語で伏線を回収するようなイメージですね。
ちなみに、割愛しましたが、この第10変奏はこの後1ページ目で繰り返されたパターンが出てきて終了です。
なので、仮に、1ページ目で頻出する太枠のパターンを[A]、2ページ目で頻出する半音階のパターンを[B]とすると、この曲は[A-B-A]という形で出来ていることがわかります。ここから分かるように、ざっくり言えば、この曲も、前述の「きらきら星」や「ぶんぶんぶん」と同じ三部形式です。
以上を踏まえた上で第10変奏を演奏しました。
少し音が割れてしまいましたが、参考までにこちらから聞けます↓
総括: 曲の「地図」を持って、譜読みや初見に取りかかろう
行ったことのない場所、土地勘の無い場所を訪ねた時、Google地図は欠かせませんよね。
Google地図が使えなかったら、その土地の観光インフォメーションで地図を手に入れたいと思うはずです。
地図があれば、何がどこにあるのか俯瞰することもできるし、無事目的地にたどり着くこともできます。
何もわからないで歩き出してしまうと、よほど方向感覚が鋭くない限り迷うし、道を覚えることも不可能ですよね。
新しい曲の譜読みをしたり、初見試奏をしようとするときに、曲のパターンを把握しようとすることは、その曲の地図を手に入れようとすることと同じです。
最初の一歩は「なんとなく見た目が似ている」を見つけることです。
音楽の地図を片手に、楽しいピアノ練習が出来ますように!
当教室【杉並ピアノサロン】の様子はこちら♪
2021.6.14